【未解決事件は終わらせないといけないから】評価・レビュー 意欲的な推理システムのミステリーADV

ゲームレビュー
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本記事は、2024年1月にSteamで発売されたミステリーADVゲーム『未解決事件は終わらせないといけないから』の評価・レビューです。開発は韓国のインディー開発者、SOMI氏によるものです。

本作の魅力は、プレイヤーに「能動的に」推理させる仕組みが非常に巧みに作られている点です。推理ゲームとして新たなシステムを提示しており、プレイヤーが自分の頭で考えて事件の真相にたどり着く体験ができます。また、日本語翻訳も非常に優秀で、自然な翻訳が推理の邪魔をせず、ストレスなく物語と推理を楽しむことができました。

本レビューでは、ゲームシステムを中心に評価していますので、物語の核心的なネタバレが無いよう配慮しています。それでもゲームの性質上、事前に情報を入れないほうがより楽しめる場合も多いと思います。気になる方はここでブラウザバックするか、興味がある部分だけを読んで、そのままプレイしてみることをおすすめします。

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良かった点、気になった点 簡易まとめ

まずは『未解決事件は終わらせないといけないから』の良かった点と気になった点を簡単にまとめておきます。

■良かった点

・プレイヤーに能動的に推理させるパズルのような推理パート
・非常に高品質な日本語翻訳

■気になった点

・操作性やUIの不便さ
・感情移入がしづらく、早い段階で先の展開が読めてしまう

良かった点が少なく見えるかもしれませんが、このゲームの魅力は「推理パートの仕組みの良さ」に集約されていると感じたため、このような評価となっています。

ゲームの簡単な概要

「この事件、初めて接したときにすごく驚いた覚えがあります。誰もがそれぞれの理由で嘘をついてました。」

清崎蒼警部の退職から12年後、ある日訪ねてきた若い警官。彼女は「犀華ちゃん行方不明事件」を終わらせるよう協力を要請してきた。清崎はバラバラになった記憶のかけらを思い出して再構成するが、明らかとなったのは犀華の周りの全員が嘘つきだったということだけ。

未解決事件は終わらせないといけないから Steam 販売ページより

  • 対応プラットフォーム:Steam(PC)、Nintendo Switch
  • 発売日:2024/1/18
  • 価格:Steam版:800円。Switch版:990円

「未解決事件は終わらせないといけないから」は、韓国のインディーゲーム開発者であるSOMI氏が手がけた推理アドベンチャーゲームです。

プレイヤーは、12年前に発生した「犀華ちゃん行方不明事件」の真相を解明するため、元警部の清崎蒼と共に彼女の曖昧な記憶を辿っていきます。ゲームの進行は、清崎の断片的な記憶をパズルのピースのように組み合わせて推理を進め、正しい順序で並び替えることで物語が進展していくという独特な仕組みです。

この推理パートが、本作をユニークで面白い作品にしている最大の特徴となっています。

「未解決事件は終わらせないといけないから」の良かった点

プレイヤーに能動的に推理させるパズルのような推理パート

本作の最大の魅力は、プレイヤーが自らの手で謎を解くことに特化した「推理パートの仕組み」であり、それがプレイヤーが能動的にミステリーを解くということにつながっています。

バラバラなピースの「時系列(When)」と「誰(Who)」をつなぎ合わせる

清崎蒼の記憶を頼りに、断片的な証言を集めていくのですが、その証言は「いつ」起こったのか、「誰」の証言なのかが曖昧で、まさにパズルのピースのよう。

これらのバラバラな証言(ピース)を正しく組み合わせることで、誰がどのような時系列で語ったのかを整理し、一連の事件の真相を少しずつ明らかにしていくのです。

証言の内容や口調、付随するイラストなどから証言者や前後関係を推測します。誰が話しているのか曖昧なものや、似たような証言が並んでいるもの、時には「嘘」をついているものもあり、簡単には分かりません。

しかし、注意深く読み進めると「この証言とこの証言は同じ人が話しているかも!」といった繋がりが見つかるはずです。それらを正しく並べ替えると、エフェクトと効果音で正解が示され、このパズルの解けた瞬間が思いのほか快感でちょっとした達成感が得られました。

こうして次々に証言を正しい時系列と発言者を当てはめ、時には「嘘」を暴きながら、プレイヤーは一歩一歩、真実へと近づいていくのです。

この推理パートを始めて見たとき、時系列を並び替えるだけでなく、発言者まで推理させることで、プレイヤーに証言をじっくり読ませる仕組みが非常に上手いと感じました。同時に、誰が言っているかを分からなくすることで、「信頼できない語り手」を自然と生み出し、ミスリードや混乱を誘うことも可能となっており、本当に巧妙につくられたシステムだと感心しました。

時系列があやふやでそれを推理して並べ替えるというのは、ADVゲームでも時折見られますが、そこに発言者まで加えるというのは珍しく、とても良いアイデアだと思います。

次々と出現する断片的な証言

最初から全ての証言が見えるわけではなく、物語の「導入」となる複数の証言が最初に提示され、それらを読み進めることで新たな証言が思い出されるようになっています。

例えば、証言の中には「特定のキーワード」がタグとして含まれており、それをクリックすると新たな証言が現れ、次々と断片的な証言が増えていくのです。

思い出される証言たち

こうして新しく増えた証言と既存の証言とを有機的に結びつけようと考え、自然と推理していくこととなるのです。文章をただ読み進めるノベルADVとは違い、より能動的に推理する仕組みになっているなと感じました。

「解ける」と加速するストーリー

証言を読みキーワードから新たな証言を引き出すと、次の証言が出現しなくなる停滞期に入ります。

この停滞期では、じっくりと推理し「誰がどのような時系列で発言したのか」を整理して、証言というピースを正しい順番でつなげていくことが求められます。正しくつなげることができると「鍵の欠片」が手に入り、一定数集めると新たな証言を解放する「鍵」を一つ獲得できます。

「鍵」を使って証言を解放すると、また新たな情報が手に入るので、その情報をもとにさらに推理が進みます。正しく並べ替えて鍵を手に入れ、次の証言を手に入れるというサイクルがどんどん回り、事件解決に向けて物語が加速的に進んでいくのです。

総当たりではなかなか解決できないような仕組み

新たな証言を解放する要素は鍵だけではなく、質問に正解することで解放されるものもあります。質問は、証言をきちんと読んで推理できていれば分かる内容ばかりで、ここにも推理させるために証言をじっくりと読ませる仕組みが取り入れられているわけです。

また、複数桁の数字で解答する質問も存在し、総当たりでは簡単に解決できないようになっています(もちろん総当たりで数の組み合わせを試すこともできますが、あまり考えたくないですね)。

全ての日付を入れることはできるけど…

ポイント&クリック式のゲームにありがちな「ただクリックして情報を得るだけ」という作業感は薄く、推理することにさほど慣れていない人でも、パズルを通じて「能動的に推理を行い」、「答えを探す」ことに成功しているのではないかと思います。これがこの作品の優れた点だと感じました。

とはいえ、総当たりでは解けないわけでもなく、適当にクリックしたり並べ替えたりして正解にたどり着くことも可能となっています。実際にそのような方法を取り入れながらクリアした方もいるようなので、「推理できなかったらどうしよう…」と尻込みする必要はないということも覚えておいてください。

非常に高品質な日本語翻訳

冒頭でも述べた通り、このゲームは韓国で制作されたゲームです。推理を楽しむためには、翻訳の質が非常に重要となります。

ですが、本作の日本語翻訳はとても優れており、一部の人名以外はほとんど違和感なく読み進めることができました。800円という手頃な価格でありながら、ここまで質の高い翻訳が提供されているのは驚きです。

過去にひどい日本語訳のゲームをプレイして「海外ゲームは翻訳が心配…」と思っている方でも、このゲームなら安心して楽しむことができるでしょう。翻訳の質が高いおかげで、推理にも物語にも集中できるのは本当にありがたいポイントですね。

「未解決事件は終わらせないといけないから」の気になった点

操作性やUIの不便さ

証言を並び替えたり、未確認のキーワードを探したりする際に、操作性やUIの不便さがきになりました。特に証言の数が増えてくると「探している証言はどこだっけ?」となりがちで、今並び替えている証言がどれなのか分かりづらくなることもありました。

このあたりがもう少し直感的に操作できて、見やすく表示されるようになれば、さらに快適にストレスなくプレイできたのではないかと思います。

感情移入がしづらく、早い段階で先の展開が読めてしまう

物語自体が感情移入しづらいわけではありませんが、証言をパズルのように並べ替えるというゲーム性のため、登場人物たちの背景や心情があまり描かれておらず、感情移入がしづらいと感じました。せっかくの良いシナリオなので、もっと登場人物の心情や葛藤を描ける仕組みがあれば、物語としてもさらに深みが増して優れたものになっていたのかなと思います。

また、早い段階で物語の展開やトリックが予測できてしまった点も気になりました。これは推理小説や推理ADVに慣れている人なら同じことを感じるかもしれません。本作はシステムを楽しむという側面も強く、このシステムを体験できたので問題ありませんが、「本格的な推理」を求めるプレイヤーには物足りないと思います。

むしろ「パズルは嫌いではないし、推理ゲームにも興味がある」という方にこそ、推理が楽しめる仕組みが揃っている本作はとても合うのではないかと思います。

その他の要素

ボリュームは控えめ

私の場合、1時間半くらいでクリアしてしまいました。このゲームのボリュームはそれほど多くなく、だいたい1~4時間程でクリア可能です。

このボリュームに関して、私の見解としては、

  • パズル部分のボリュームとしては十分
  • キャラクターの心情描写などのボリュームは不足

と考えています。

■パズル部分のボリューム

推理パートのパズルの自体は斬新で、能動的に推理させる仕組みがしっかりと備わっており、非常に好印象でした。ただ、この仕組みは本作のような短いゲームだからこそうまく成り立っているのだと思います。

もし10時間以上の長編ノベルアドベンチャーゲームで、ずっとこの推理パートのパズルを解きつづけるとなると、情報が多すぎる上に新鮮味も薄れ、飽きてしまうことでしょう。今回のボリューム感だからこそ、バランス良く楽しくプレイできたと感じています。

■心情描写などのボリューム

一方で、物語としては心情描写などがもう少し欲しかったというのが率直な感想です。前述の通り、証言を集めてつなげるだけではキャラクター達の内面描写が不足しており、感情移入がしづらい部分がありました。もしキャラクターの心情や葛藤を補完する工夫があれば、物語としてもっと魅力的な作品になったのではないでしょうか。

評価・レビューのまとめ

【未解決事件は終わらせないといけないから】の私の評価をまとめると、以下のようになります。

  • 能動的に推理させるパズルのような推理パートが素晴らしい
  • 日本語翻訳が非常に優秀で、推理や物語を邪魔しない
  • 推理好きには、先が読めてしまう展開
  • 操作性や心情描写のボリューム不足が惜しい

特に、証言をじっくりと読んで並び替えながら時系列を整理し、矛盾や違和感に気づかせるこの推理パートの仕組みは逸脱だと感じました。海外のゲームでありながら、優れた日本語翻訳が提供されているため、ストレスなく推理や物語を楽しめたのも高評価です。

普段から推理小説や推理ADVゲームにあまり触れないけれど推理ゲームに興味があるという方で、パズル的な要素が嫌いでないなら本作はとてもお勧めできると思います。能動的に推理させるシステムが揃っているので、「ちゃんと解いたぞ!」という満足感を味わえるはずです。

一方で、普段から推理小説や推理ゲームにどっぷりハマっている方にとっては、トリック自体に目新しさはなく、早い段階で展開が読めてしまうと思います。そのため、推理の深みに期待して購入するのはおすすめしません。独特なシステムなどの他の要素に興味があるならプレイしてみるくらいで良いと思います。

推理の内容としてはそこまでの評価ではないですが、推理させる仕組みとしては非常に高評価で、個人開発のインディーゲームからこのようなメカニクスのものが生まれたことは、本当に喜ばしく素晴らしいことだと思います。

Steamだけでなく、2024年9月19日からはNintendo Switchでも遊べるようになっているので、気になった方はぜひ一度手に取ってみてください。

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