【クロステイルズ】レビュー・評価 ストーリーには期待せずジョブシステムと育成を楽しむSRPG

ゲームレビュー

2023年7月にケムコ(開発元:ライドオン)から発売されたSPRGである【クロステイルズ(CROSS TAILS)】の評価・レビューを書いていく。

本作は、FFT(ファイナルファンタジー・タクティクス)を彷彿とさせるジョブシステムとユニット育成が楽しめる一方で、2人の主人公を用意したマルチシナリオを謳ったにも関わらずシナリオ自体は非常に淡白な出来であった。

結論から言うと、SRPG好きの中でも

  • 物語は必要無い
  • ジョブを色々変えてキャラ育成をしたい
  • 自動戦闘で経験値稼ぎして最強キャラを作りたい
  • 昔ながらのSRPGの戦闘を楽しみたい

という人にはオススメな作品となっている。

また、同開発元のSRPGである「マーセナリーズ」シリーズが大好きな人にとっては、マーセナリーズシリーズよりもジョブ自由度が上がった作品となっているので恐らく気に入るゲームとなるだろう。

しかしながら、TO(タクティクス・オウガ)やトライアングルストラテジー、FFT、FE風花雪月などのようにストーリーも楽しみたい人には合わない可能性があるので注意したほうが良い。

なお、本記事は猫族(シャイマー)ルートにて1周目を難易度ハードでクリアし、2周目を少しだけプレイした時点でのレビューとなる。総プレイ時間は25時間程度。

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クロステイルズの良かった点、気になった点 簡易まとめ

まずはクロステイルズをプレイして良かった点、気になった点を簡単にまとめておく。

  • 豊富なジョブシステム。サブジョブも装備でき育成自由度が高い
  • 任意のキャラを集中して強化することも可能な育成関連
  • フリーバトルや難易度イージーと救済措置が用意されている
  • 可愛く描かれた猫族・犬族のキャラクター達
  • シナリオが非常に淡白で薄味
  • イラストは無く名前も変更できない汎用ユニット
  • ボスやタンクユニット以外は1~2撃で倒れていく火力調整
  • 見づらい戦闘マップと、もう少し改善して欲しいUI

クロステイルズの概要

犬族の住まう『ランヴェルフルト王国』
猫族の集い『ヒディーク共和国』
そして数十年にも及ぶ両国の戦争

二人の主人公それぞれの視点から物語を追い、本当の真実を知ろう

◆◇二人の主人公◇◆ ~獣達の瞳が映し出すものは~

犬族の若き隊長『フェリクス』猫族の部族姫『シャイマー』

選んだ主人公によって異なる仲間達と共に戦うことになり、戦略性も変化する。

クロステイルズ Steam販売ページより

ジャンルはSRPGであり、戦闘システムはライドオンから発売しているSRPGの「マーセナリーズシリーズ」をベースにジョブシステムなどが改良された作品となっている。

ゲーム開始時に2人いる主人公のうち1人を選択し物語が始まっていく。

戦闘はクォータービュー・スクエアグリッドのオーソドックスなSRPG。MPはバトル開始時は0でターン毎に回復していくシステム。

戦闘パートと短いストーリーパートを繰り返し、戦争関係にある二国の物語を追っていくこととなる。

クロステイルズの良かった点

豊富なジョブシステム。サブジョブも装備でき育成自由度が高い

本作の目玉とも言って良いのがジョブシステム。戦士・魔術師・神官の下級職から始まり、ジョブランクを上げて転職条件を満たすと上位ジョブへとクラスチェンジできるようになっており、上級職ともなると複数ジョブのランクを上げる必要が出てくる。

これを読むと「おおっ!FFTか!?」と思う人も出てくるかもしれないが、FFTのジョブシステムをある程度は踏襲して製作しているようにも思える。モンクでカウンター系のリアクションアビリティを習得できたりするので、プレイしていてニヤリとしてしまった。

当然ながら完全にFFTと同じというわけでもなく、踏襲しつつもオリジナリティも出している。例えば各キャラはキャラ固有のジョブが用意されており、固有ジョブ+汎用メインジョブ+汎用サブジョブを装備できるようになっている。またジョブランクは戦闘後に入手できるJP(ジョブポイント)で上がっていくが、各ジョブのスキル習得にはJPではなくお金を消費して覚えるようになっている。

覚えたスキルに関して、常時効果を発揮するパッシブスキル(移動力+1や反撃など)は一度覚えればどのスキルでも装備できるが、戦闘中の行動時に使用するアクションスキルは現在就いているジョブのスキルしか使用することができない。そのため、戦闘で使いたいスキルがあるジョブを装備するのか育成したいジョブにするのか、そのジョブ選択が悩ましくも面白いところとなっている。

汎用ジョブの数は24個、最上級職は各系統で1種類ずつ用意されている。最上級職と聞くと心躍るものがあるが、特段の稼ぎプレイをせずに1周クリアするまでプレイすると、だいたいのキャラが1つの最上級職に到達するくらいに調整されていた。

こういうジョブシステムのSRPGは久しぶりにプレイしたので、

  • 次のジョブは何だ、ジョブチェンジ条件は何だ
  • 欲しいスキルが沢山あるけどどのジョブのものを優先しようか
  • このスキルの組み合わせは強いんじゃないか

などと試行錯誤しながら楽しむことができた。

同開発元のマーセナリーズシリーズとの比較すると、ジョブシステム周りの仕様は確実にパワーアップしていると言える点である

任意のキャラを集中して強化することも可能なスキル習得システム

スキルの習得やスキルLvを上げるには、JPでは無くお金を消費して習得することができるようになっている。当然ながら装備を買うにもお金は必要なので、スキルだけにお金を消費するわけにもいかず、装備とスキルのどちらを取るかといった悩みや、お金が無い中で誰のどのスキルを優先しよう等といった悩みの中で楽しみながら育成することが出来た。

お金でスキル上げができるメリットの一つとして、1人のユニットに集中してスキルを習得させていくこともできることが挙げられる。お気に入りのキャラや戦いの要となるキャラを集中的に強化する楽しみ方もできたのは良いポイントであった。

また、アクションスキルは装備ジョブのものしか使えないため、下級職・中級職のアクションスキルは最終的には死にスキル(使用しないスキル)となりがちであるが、メインとなるアタッカーのアクションスキルのLvは上げておかないと威力が出ないため、後々無駄になりそうだけども直近の戦闘のためには上げないといけないというジレンマと闘いながらスキルLvを上げることもあった。

フリーバトルに難易度イージーという救済措置が用意されている

本作の難易度調整は後に記述するが、敵も味方も火力が高めになっているため、SRPGに慣れていない人だと難易度ノーマルでも割と味方ユニットが死んでいくことがある。

そのための救済措置として難易度イージーであったり、何度でも戦闘ができて経験値を獲得可能なフリーバトルが用意されており、不慣れでも(少なくとも1周目は)クリアできるようになっている。特にボスクラスの敵が出てくると、一気に蹂躙されかねないので、このような救済措置は良心的であると言える。

また、フリーバトルがあるため稼ぎプレイをして味方のLvを上げまくって俺TUEEEプレイもできるようになっている。自動戦闘があるのでステージを選べば自動稼ぎもできるようだ。なので無双プレイが好きな人にも適したものとなっていると思う。

一方、難易度ノーマルの上にはハードとマニアックが用意されており、通常難易度では物足りない人への対応も見られた。私は難易度ハードで1周目をクリアしたが、火力の高さやヘイトシステムの穴に若干の不満を抱えながらも全滅することなくクリアすることができた。恐らく難易度ノーマルだと物足りなさを感じたと思うので、高難易度を用意してくれているのはありがたいことである。

難易度も戦闘中でなければ変更でき、元の難易度に戻すことも可能なので詰まったステージだけ難易度を落とすということも可能である。

本作で用意されているコンテンツを全て遊ぶためには4周する必要があるため、難易度イージーから初めて慣れてきたら少しずつ難易度を上げていくも良し、初めから最高難易度のマニアックでプレイするも良し。各自のプレイスタイルに合わせて調整していこう。

可愛く描かれた猫族・犬族のキャラクター達

本作は猫族と犬族の対立が描かれているが、両者ともにキャラクターデザインが非常に可愛らしいものとなっており、とても訴求力が高い。RPGだと、「このキャラクターの見た目が気に入ったからメインで育てよう!」となることも多いため、可愛く描かれているのはとても良いと思う。

また、犬族・猫族だけでなく、爬虫類族も出てきて仲間になったりするので、バリエーションにも富んでおり、こういうキャラが好きな人には刺さるだろう。

魅力的だが仲間には……

惜しむらくは、イベントなどで一枚絵などのイラストなどが用意されていなかったことだ。3000円と廉価な製品であるため、そいういう面でのコストは削っていったと思われる。

クロステイルズの気になった点

シナリオが非常に淡白で薄味

ここからは個人的に残念だと思った点について述べていく。まずはシナリオ

「交差する物語」、「二人の主人公それぞれの視点から物語を追い、本当の真実を知ろう」などと謳って、ダブル主人公のマルチシナリオを一つの売りにしている本作だが、シナリオ自体は非常に短く薄く、驚くような展開は何も無い。まるで1時間噛み続けた味のしないガムを噛んでるかのようだった。

世界観としても、猫族・犬族の物語となっているが、実際には獣耳と尻尾だけ生えた人間であり、犬や猫である必要性はなく、ファッションとしての種族設定となっている。ワールドマップは存在し選択式で主人公達を移動させるが、そもそものバックグラウンドや地名説明もあまり無いので次戦闘が起こる場所をただ選択して移動しているだけ。

それに加えて、仲間になるキャラクターの深掘りもほとんど無く、キャラクターの魅力は何かと聞かれると「イラストが可愛い」くらいしか答えられないのが非常に残念な点であった。個性がほとんど描かれないのである。SRPGだとユニットに愛着を持って使っていくことも多いので、魅力を感じるポイントがあまり無かったのは悲しいことである。

思わせぶりなことを言っているが…

また、本作のバトルシステムの1つとして「獣神技」と呼ばれる必殺技的なものが中盤以降使用できるようになるが、使えるようになる時の演出などほぼ無い。ただただ使えるようになったことを知らせる説明と、チュートリアルが出てくるだけである。肝となるシステムのハズなのに何も無くて唖然としてしまった。

以上で述べたように、本作のストーリーはあくまで戦闘や育成の邪魔をせず、ただただ次の戦闘に向かわせるために差し込まれる短い文章を表示するだけのモノとなっている。正直好き嫌いが分かれるところであるし私は非常に残念に思ったポイントであるが、逆に、育成・戦闘に集中したい・長いストーリーなんかいらないという人にはピッタリかもしれない。

トライアングルストラテジーをプレイした人の中には、戦闘は好きだけど長いストーリーパートは好まないという人も一定数いたので、そういう人にはもしかしたらクロステイルズの方が合うのかもしれない。また、マーセナリーズシリーズが好きな人は、シリーズとほぼ同クオリティの物語展開だと感じたので困惑することなく楽しめるだろう。

一方で、2人の主人公を用意しました、それぞれがマルチシナリオになっているので全部で4周の物語を楽しめます、と言われた時にシナリオに何かしら期待してしまう人には向いていないと思う。私はまさしくそうであった。ストーリーがあまりにも虚無であったため、1周目を終えて次は真ルートに行けます!と言われたところで「この物語で真ルートと言われても…全く読みたいとは思わない…」というのが1周クリア後に抱いた正直な感想である。

本作の特徴として物語はあくまでオマケであることを理解して、他のSRPG要素(育成・戦闘など)を期待するべきであり、マルチシナリオという言葉に惹かれたり有名なライターが関わっていることで何かしらストーリーに期待している人は、一度考え直した方が良いだろう。そこに楽しみを見出すことは私には難しかった。

こう言われると身構えてしまうかもしれないので、気になった人はSwitch、Steam、Xbox、PS各プラットフォームにてクロステイルズ体験版が出ているのでプレイしてみると良い。バトルを体験できるとともに、物語がどのような感じで進んでいくのかを体感できる。シナリオは体験版のような感じで最後まで進んでいくと思ってもらってほぼ問題ない。ストーリーに違和感を抱かず「戦闘や育成が面白そう!」となったらきっと合うだろう。

イラストは無く名前の変更ができない汎用ユニット

SRPGにおいて汎用ユニットを育てて使うのが好きなため、汎用ユニットを雇用できるようになっているのは非常に嬉しかったのだが、汎用ユニット用のイラストはなく名前を変更することもできなかったのは残念であった。

名前も変更できないのならと思って結局初めからパーティーにいたユニットを育てることにしたが、愛着を持つという意味ではイラストと名前変更はある方が嬉しかった。同じ考えの人は注意したほうがよい。

ボスやタンクユニット以外は1~2撃で倒れていく火力調整

本作では割と火力が高めに設定されており、終盤でもボス級のユニットやタンクユニット以外は、だいたい1発~2発の攻撃で倒れていく。これは敵も味方も同じである。なんせ命が軽い。雑魚敵を囲んで集中攻撃という場面はそれほど多くない。味方ユニットの攻撃1発で敵が沈んでいくのは爽快感があるかもしれないが、ちょっと大味にも感じた。難易度ハードでもこれなのでノーマル以下は1撃で倒せるケースが更に多いのかもしれない。

火力と体力に関して、個人的にはもう少しダメージ倍率が低めのほうが好きだったなと思う一方、高火力でなぎ倒していくキャラを作れるということでもあるので、好みが分かれるところだろう。

また、ヘイトシステムが導入されているため通常時はヘイトの高いユニットに優先的に攻撃が向くことが多いが、防御性能が低い味方ユニットが敵攻撃範囲内に入っているとヘイトを無視してその後衛が攻撃され倒されることも結構あったりした。ここら辺はチュートリアルでも説明があったがヘイトを過信しすぎないほうが良い。

やや見づらい戦闘マップと、もう少し改善して欲しいUI

マップやUI関連の不満は以下に記しておく。

  • マップの回転遅い。結局見づらい。もう1段引きの画面があれば嬉しかった
    ただし45度ずつカメラアングルを調整できるのは良かった
  • 戦闘開始前のユニット配置画面でミッション内容が確認できない
  • 戦闘高速化オプションが欲しかった(スキルエフェクト省略オプションとは別)
  • パッシブスキル装備画面など、中盤以降はスキル数多くてやや煩雑
  • スキルなどで複数ターゲットがいる場合の切り替えボタンがなく面倒くさい

他にもあるがこれくらいで。ちょっと痒いところに手が届かなかったなという印象である。

レビュー・評価まとめと、本作をおすすめできる対象

以上、クロステイルズの評価をまとめると、

  • ジョブが豊富で自由に育成可能
  • 稼ぎ&自動戦闘が可能で、俺TUEEEもできる
  • シナリオが絶望的に淡白であり、決して物語自体に期待してはいけない
  • キャラクターは可愛いが、深掘りがなくイラスト以外に魅力が無いのが残念

となる。

ストーリーがあまりにも虚無であったため、最上級職を開放した後の終盤のモチベーションの維持が大変だったし、このストーリーで4周できますと言われてもただのプレイ時間のカサ増しにしか感じられなかったが、豊富なジョブが用意されているSRPGを楽しめたという意味では一定の評価はしたいと思う。

特にストーリーなんて二の次で「育成や戦闘を楽しみたい!」、「お気に入りユニットのレベルを上げて無双したい」という人は十分楽しめるのではないかと思う。

そういう人は是非とも体験版をプレイしてみて欲しい。ストーリーが気にならず、育成やバトルが楽しそうと思えるならばオススメできる。体験版ではフリーバトルは出てこないが製品版では序盤からフリーバトルが追加されるので、そこが気になる方も安心して欲しい。

あとはマーセナリーズシリーズが好きな人も問題無く楽しめるであろう。ジョブシステムの自由度が上がっている、スキル習得がお金になっている、などという違いもあるが、そこを楽しそうと思えるならオススメである。

逆に、ストーリーに対してある一定以上の水準を求める人は本作に手を出すのは推奨しない。クロステイルズはそこを削って作製されたものと考えられる。

自分がSRPGに何を求めるのかを考慮して、値段とも相談して購入判断をして欲しいと思う。

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