【終のステラ】評価・レビュー 機械と人間が織りなす、心に残る成長の旅

ゲームレビュー
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本記事は、2022年9月30日にVisual ARTS/KeyからPC向けに発売されたキネティックノベルゲーム【終のステラ】のレビュー・評価記事となります。

シナリオを担当するのは田中ロミオ氏、終末世界を舞台にした設定、そして2000円以下のロープライスということで、どのような作品になっているのか期待と不安を抱えながらプレイしましたが、結果的には「プレイしてよかった」「もっと早く遊んでおけばよかった」と感じさせてくれる素晴らしい作品でした!特に終盤の展開には心を打たれ、その演出と描写に涙腺が緩んでしまいました。

本レビューでは、比較的ネタバレを少なく抑え、特に核心的なネタバレが無いよう配慮していますが、それでも軽度のネタバレは含まれています。事前にあまり情報を入れたくない人はブラウザバックするか、気になる部分だけを読んでみて、興味が湧いたら是非そのままプレイしてみてください。

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終のステラの良かった点、気になった点 簡易まとめ

はじめに、終のステラをクリアして感じた良かった点、気になった点を挙げておきます。

■良かった点

・登場人物の少なさを逆手に取った密度の濃いストーリー
・終末を迎えた世界、生き延びた人間達とアンドロイドという世界観
・OP曲、ED曲、せつない挿入歌と素晴らしい音楽達
・2000円以下のノベルゲームとしての出来の良さ

■気になった点

・序盤から中盤にかけての特定の人物の言動

終のステラのあらすじと簡単な概要

地球が、すでに人類の世界ではなくなってから久しい。
世界はシンギュラリティを起こした機械群に支配され、人々はその片隅で、息を潜めて生き長らえていた。

運び屋“ジュード”の元に、依頼が舞い込む。 それはシンギュラリティ機械群の影響を受けない、 少女型アンドロイド“フィリア” を輸送して欲しいというものだった。
世間知らずなフィリアの行動に嫌気がさしながらも、ジュードは旅を始める。 時には略奪を繰り返す人間から逃げ、時には機械群が闊歩する危険地帯を通り抜け、 輸送依頼を果たそうとする。

フィリアは何度も人間になりたいと口にする。
遥か空の先に辿り着けば、 アンドロイドは人間になれると言うのだが……?

終のステラ 公式サイトより

  • 対応プラットフォーム:PC(Steam、DMM Gamesなど)
  • 発売日:2022/9/30
  • 価格:1980円(税込み)

シンギュラリティが訪れ、人類ではなく機械群が優勢な終末世界を舞台とした、一人の人間と一人のアンドロイドが織りなす物語。

キネティックノベルゲームということで選択肢はなく、演出を交えながら物語を読み進んでいく形のノベルゲームとなっています。

また、スマートフォン・タブレット向けとしてiOSやGoogle Playからもプレイできるようです。こちらは導入部のみ無料、無料パート以降は買い切り価格で購入という形となっています。

終のステラの良かった点

登場人物の少なさを逆手に取った密度の濃いストーリー

ジュードとフィリアにフォーカスして描かれた物語

この物語は主に二人の登場人物の視点で描かれていきます。一人は情に薄く「現実主義」な人間である運び屋ジュード。もう一人は人間になりたいと強く願うが「現実を知らない」少女型アンドロイドのフィリア。

人間らしさを求めるフィリア

こんなデコボココンビが共に旅をする以上、何も起こらないわけがなく。時には反発しながらも、お互いに影響を与えあい、旅は進んでいきます。退廃した世界で生き残るために現実主義となっていったジュードが、他人であるフィリアと少しずつ心を通わせていくが…。このあらすじだけでも自分好みな設定であり、ドンドンと読み進めることができました。

二人はどのように成長していくのか、そして二人の旅にいかなる結果をもたらすのかは本編に委ねたいと思いますが、登場人物が少ない分主要キャラである二人にフォーカスし、その旅の間の交流や成長といった要素を丁寧に描写しており非常に好感が持てる文章とストーリーでした。

もちろん登場人物が多くなればその分展開の多様化だったり複雑性を持たせることが出来ますが、主要キャラが少ないのであれば少ないなりの物語の見せ方があるという事をきちんと示してくれたと思います。

日常と非日常のギャップと最終盤への盛り上がり

二人で旅をしているため、当然ながら二人の間の日常的な会話シーンが多く描かれています。ほんの些細な出来事や、目覚めたばかりのフィリアにとっては初めての経験することとなる出来事も登場します。日常があるからこそ非日常が際立ち、終盤に向かうにつれその貴重さが一層深まっていきます。

物語を終えた時には、「あの旅路での何気ない会話も尊いものだったんだ」と改めて気付かされるのです。

カレーは最高の食べ物だよね

プレイして感じたのは、伏線が巧妙に散りばめられてその回収が見事というよりも、終盤に向けた展開や音楽を含む演出によって、それまでの旅の集大成を思い返し、ただただ涙が溢れるというものでした。読後の充足感は非常に高かったです。

しかし、単なるご都合主義ばかりというわけでもなく、「なんでこうなっているんだろう?」と思うようなポイントに対してもきちんとした説明がされており、設定も丁寧に練られている印象を受けました。

物語の結末に関しては、「この終わり方で良かったのか?」と思う人もいるかもしれませんが、私は「これ以外の終わり方は考えられない!」と非常に納得できるものであり、本当に素晴らしい作品を読めたなと感じました。

終末を迎えた世界、生き延びた人間達とアンドロイドという世界観

シンギュラリティを経験し、かつて栄えた文明は滅び、今や残っているのは少数の人間と残された機械群、そしてアンドロイドだけ。地球上で優勢なのは人間ではなく、これらの機械群。そんな世界において、残された過去の遺物と豊かな自然が描かれる様子は退廃的な美しさを湛えており、純ファンタジーでもなければサイバーパンクな雰囲気とも異なる、しかし確かにポストアポカリプスの世界を感じさせます。

平和な世界でアンドロイドと共生するような世界観ではなく、死が身近にある環境で、人間一人生き伸びるのにも精一杯。他人の世話を焼く余裕などない。

そんな状況下だからこそ、主人公たちが本能と感情、そして理性との狭間で揺れ動く姿が描かれ、その極限状態での選択に重みが生まれてきます。

こうした世界観の構築とテーマの絡め方は、さすが田中ロミオ氏、さすがKeyと感じざるを得ませんでしたね。

OP曲、ED曲、せつない挿入歌と素晴らしい音楽達

私がこのゲームで本当に良いと感じたポイントの一つは、楽曲の素晴らしさです。

  • キャッチャーなオープニング曲「Breath of Stella
  • 切ない挿入歌「終の祈り
  • 作品の終わりに相応しい「Ortus

特にこの3曲は本当に最高でした。

物語の核心に関わる部分でもあるので、「終の祈り」と「Ortus」については、ただストーリーに非常にマッチしていて素晴らしかったとだけ言っておきます。一方、「Breath of Stella」の曲調は、終末世界での旅路や冒険のワクワク感を存分に表現していて、オープニング映像と相まってとても格好良く仕上がっています。歌詞に込められた意味も、クリアした今なら全て解ってしまう針原翼さん本当に良い仕事をされていますね。

Youtubeの公式OP動画を貼っておきます。気になった人は是非。

その他のBGMでは、「Beggining」「Almighty」「Yearning for my F/D」「Vast Forest」などがお気に入りです。特にYearning for my F/Dは作中での流れるタイミングや旋律、そしてその曲名がもう反則級でしたね。

全体的にクオリティが高く、作品にしっかりと寄り添った楽曲が揃っていて、本当に素晴らしい仕上がりでした。

2000円以下のノベルゲームとしての出来の良さ

Visual ARTS/Keyのキネティックノベル3部作のひとつである【終のステラ】。プレイする前は、低価格キネティックノベルと言うことでボリュームやクオリティがどの程度のものかと少し疑う気持ちもありましたが、実際にプレイしてみると「えっ、これを2000円以下で遊べていいの?」と思うほどの完成度でした。

ボリュームとしては6~10時間程度で、シナリオは短くも高密度にまとめられています。背景やスチルは十分に用意されており、フルボイスで素晴らしい楽曲達も揃っています。Keyさん、これ採算取れてる?大丈夫?と少し心配になるほどのクオリティでした。

低価格ゲームとしては想定以上に背景も豊富

実はこの点について、田中ロミオ氏のインタビュー記事でも話題に挙がっていて、ちょっと面白かったです。他にも氏の考え方や制作に関するちょっとした裏話なども語られているので、興味がある方はクリア後に是非読んでみてください。

終のステラの気になった点

序盤から中盤にかけての特定の人物の言動

本作で唯一気になった点があり、それが序盤から中盤にかけての特定のキャラクターの言動です。作品の設定が好きで、話も面白いと感じて読み進めている中で、「えっ!?この場面でそんなこと言っちゃうの?」と思う場面が何度かありました。

この記事では具体的に誰の言動かは触れませんが、私だけでなく、周りのプレイヤーの中にも同様の不満を感じている人がちらほら見受けられました。

ただ、クリアしてみるとそれも含めて物語に必要不可欠な要素だったのだなと思えるようになりました。とはいえ、プレイ中にちょっと微妙だなと感じたのも事実。

これからプレイする方は、もし不快に感じる言動があったとしても、できるだけプレイを続けてみてください。世界観や、不快な言動以外の部分が気に入っていれば、最終的に満足できる可能性が高いと思います。

その他の要素

選択肢はなく、一本道のシナリオ

本作は低価格キネティックノベルということで、一般的なビジュアルノベルのように選択肢が提示され、それをプレイヤーが選ぶというシステムはありません。プレイヤーは物語をそのまま読み進める形式となっており、当然シナリオも一本道でルート分岐もありません。

プレイヤーが物語に介入できない一方で、一本道のシナリオであるからこそ、作り手の意図がストレートに伝わりやすいとも言えます。また、この形式は制作コストを抑えることができるため、ルート分岐を必要としないタイプのノベルゲームを低価格で製作するには非常に適した手法だとも感じます。

選択肢が無いという点については、あらかじめご承知の上で購入してくださいね。

終のステラの評価・レビューまとめ

以上、終のステラの評価をまとめると、

  • フィリアとジュードの旅を密度濃く描いたストーリー
  • 終末世界を生きる人間とアンドロイドという、興味をそそる世界観
  • 心を揺さぶるOP曲、ED曲、挿入歌と素晴らしいBGMたち
  • 一部不快な言動もあるが、それ以外の要素が気に入っているなら最後までのプレイを推奨

となります。

特に、旅をする中でのフィリアとジュードの関係性の変化や、それぞれの成長を見届けられる点が魅力的で、すべての積み重ねが最後に繋がっていくストーリーを読むことができ、「この作品をプレイして良かった」としみじみ感じました。

私はこれまで田中ロミオ(山田一)氏の作品は、「CROSS CHANNEL」と「家族計画」くらいしかプレイしたことがありませんでしたが、他のビジュアルノベル作品やライトノベル作品にも手を出してみようかなと思いました。

近年、フルプライスのビジュアルノベルゲームは厳しい状況に置かれていますが、本作のように低価格でありながらクオリティの高い作品が登場していることは非常に嬉しいです。

個人的には、同社から配信されている「ヘブバン」(ヘブンバーンズレッド)のような運営型ゲームよりも、買い切り型のゲームの方が断然遊びやすく好みですので、今後もこのような買い切り型のビジュアルノベルゲームがどんどん発売されることを願っています。

最後に、「終のステラ」が気になった方は、是非プレイしてジュードとフィリアの旅路を見守ってあげてください!ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

(追記)2024年12月5日に、Nintendo Switch版も発売することが決定しました!これで、さらにに多くの方に手に取って遊んでもらえる機会が増えるので嬉しいですね。Swithc版の公式サイトは以下に。

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