「トライアングルストラテジー」レビュー・評価 不毛のSRPGに期待の新星あらわる

ゲームレビュー

2022年3月にスクウェア・エニックスより発売されたSRPGである「トライアングルストラテジー」のレビュー・評価記事です。重厚な物語と骨太な戦闘を楽しめる良作でした。

現在ではNintendo Switchにて購入できる他、Steam版も販売されておりPCでも楽しむことができるようになっています。

本記事はニンテンドースイッチ版にてTrueエンドクリア後のプレイレビューとなります。

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良かった点・気になった点 簡易まとめ

良かった点

  • 緊張感と歯ごたえのある戦闘と、キャラクター毎の個性を活かした戦略性
  • 初心者にも熟練者にも配慮された難易度選択とシステム
  • 民族間、国家間の争いに焦点を当てた続きが気になる戦記物ストーリー
  • 天秤システムによるルート分岐のワクワク感
  • それぞれの思惑を持つ魅力的なメインキャラクター達
  • 戦闘を彩る音楽

気になった点

  • テンポの悪さとUI周りの悪さ
  • 育成自由度の低さ
  • 美麗であるが視認性にやや問題のあるグラフィック

「トライアングルストラテジー」のゲーム概要

塩と鉄の利権をめぐり
三国が大戦を続けてきた大陸「ノゼリア」
この物語は、とある国の戦乱を描いた
正義と信念が紡ぐ英雄譚

トライアングルストラテジー公式HPより

トライアングルストラテジーは、スクエニの有名SRPGであるFFT(ファイナルファンタジータクティクス)の要素を受け継ぎつつ、戦記物としてストーリーも重視したSRPG(シミュレーションRPG)作品です。

スクエニ公式としても「往年のタクティクスを思わせる重厚なストーリーと奥深いバトル」と謳っており、ゲームジャンルはシミュレーションRPGであるもののバトルだけでなくストーリーを楽しみたい人にも向けた作品として作られているのが分かります。

だからといってバトルが適当になっているわけではなく、歯応えのある戦闘もこのゲームの魅力となっています。

また、グラフィック面ではオクトパストラベラーで一躍注目を浴びたHD-2D技術が用いられており、単なるドット絵から進化した美麗なグラフィックを導入するというチャレンジを行った作品でもあります。

HD2Dの導入でより綺麗に描かれることとなった戦闘シーン

制作にはあの「浅野チーム」も関わっており、そういう意味でも期待の高い作品でした。
(浅野チーム:スクエニ内の開発チーム。RPGを手掛けることが多く、代表作はオクトパストラベラーやブレイブリーデフォルトなど。
トライアングルストラテジーの開発はアートディングとスクエニ)

トライアングルストラテジーの良かった点

キャラの特性を活かしたやりごたえのある戦闘

私は難易度ノーマルでプレイしましたが「このステージ難しいぞ!!!」と思う場面が何度もあり、とても歯応えのある戦闘を楽しむことができました

敵ユニットは弱すぎず適切な強さでしたし、ボスクラスの強敵の一撃は味方体力の半分以上を削ってきたり、挟み撃ちを利用して有利な局面に持ち込んできたりと歯ごたえのある戦いを経験できました。

戦闘マップ自体も凝っていて、高低差を活かしたり、マップに仕掛けられたギミックを駆使してバトルを有利に運んでいく醍醐味も味うことができて非常に面白かったです。

また、トライアングルストラテジーの特徴として味方ユニットの個性が際立っていることが挙げられます。ユニット毎の得手不得手がとてもはっきりしていて、「そのユニットだけができること」も多く存在しているのです。

攻撃魔法特化、タンク役、回復・補助役はもちろんのこと、防御力は紙だけれども弓に関する能力だけはピカイチなアーチャー、1度の行動で薬を2度使用できる薬師、梯子や罠を設置して盤面を打開することに特化した罠師といったユニットもいて、攻略したいステージに合わせてどのようにユニットを組み合わせるかという戦略を練る楽しみがあって良かったです。

特に梯子を設置できるイェンスというユニットは非常に重宝しました。梯子を利用すると跳躍力低いユニットも高い場所に登れるようになるので、このおかげで高所を陣取る遠距離ユニットを処理できたり挟み撃ちしたりと大活躍でした。

ゴリ押しで勝てたりする他のゲームだと、このような補助ユニットは使われることが少なく埋もれてしまいがちですが、本作では補助ユニットの力も存分に借りて総力戦で倒していくという場面が多かったです。

「この面なかなか勝てない…クリアするのが難しいな」というような時でも、使うユニットを変え戦略を練り直すだけでも難易度が激変するような場面もあったりして、死にユニット(誰からも使われないユニット)が少なかったなと思います。

このゲームでは、格下から得られる経験値が非常に少なく設定されており、高レベルユニットを作るのはなかなか難しいため、主人公や強キャラを敵陣に突っ込ませて無双するのではなく、ステージや敵に合わせて戦略を練り盤面を有利にしていくという戦闘の醍醐味を存分に楽しめたのが非常に良い点でした!!

「好きなキャラを強化してレベルも上げまくって無双する」というのも一つの楽しみ方であり、それはそれで面白いですが、本作のように「主人公勢力全員の力を合わせて戦略も練って勝ちにいく」というのもまた違った楽しみ方ができて良かったです。

初心者には救済 熟練者には更なる難関を与える難易度選択とシステム

戦闘のやりごたえを書いてきましたが、あまりタクティカルRPGが得意でない人に対する救済措置として難易度「イージー」、「ベリーイージー」が用意されています。

難易度は途中でも変更できるので、初めはノーマルにしてどうしてもクリアできないと思ったら難易度を下げることも可能です。

例えバトルで全滅してもバトル中に得た経験値は得たままリベンジが出来るため、試行錯誤を続ければ勝てるようになっているのも救済ポイントの一つです。

また、低ユニットのレベル上げが容易なのも良かった点です。前述の通り格下相手では経験値が激減する一方で、格上相手になると非常に多くの経験値が得られるためレベル上げにさほど時間をとられることが無い仕様となっています。

それほど大きくは開かないレベル差

個人の所感ですが、難易度ノーマルで進めれば何度か全滅を味わいながらも試行錯誤して乗り越えられるようになっていると感じました。

ただそれでも1週目Trueエンドルートになると更に厳しい状況になってしまうため、慣れていない人に向けて易しい難易度へと変更できるようになっているのかなと思います。

更なる高難易度を求める熟練者にも難易度「ハード」が用意されており高難易度バトルを楽しめます。2周目以降もバトルを楽しみたい人は是非。

民族・国家間の紛争を描いた重厚なストーリー

中世ヨーロッパ風な世界「ノゼリア」を舞台とした利権や民族をめぐる争いが、重厚かつ丁寧に描かれており最後まで楽しめるストーリーでした。

それほど突飛なことは起こらない分、丁寧に物語が進んでいったのが印象的です。戦争物ですので暗い展開であったり、どれも選びたくない選択肢を選ばなければならない場面などもありますが、それらを乗り越えた先を早く知りたいと思える物語でした。

往年のSRPG(タクティクスオウガやFFT)は当時としてはしっかりと描かれたストーリーも評価されていることからSRPGにストーリーの良さを求める人も多く、トライアングルストラテジーはその期待に答えるかのように物語を丁寧に描いているのは非常に印象が良かったです。歯応えのある戦闘と良質なストーリーを兼ね備えたSRPGはそれほど多くないため、トライアングルストラテジーは両方を兼ね備えておりとても嬉しかったですね。

また、イベントシーンはボイス付きなのも嬉しかったポイントの一つ。白熱のシーンも多々あるため声優さんの演技にも力が入っていました。

主人公であるセレノア(声優:小野賢章)や、執事のベネディクト(声優:上田燿司)、主人公の婚約者フレデリカ(声優:津田美波)、ベネディクトの右腕であるアンナ(声優:千本木彩花)の方々の演技は特に素晴らしく、物語を更に盛り上げる要因になっていました(声優にそこまで詳しくないですが、他の声優陣も非常に豪華らしいです)。

*2023/6/13のアップデートにより、Trueエンドクリア後に見ることのできるExtra Storyが追加されています。クリアした人は是非その目で確認してみてください。

ストーリーを支える天秤システムのワクワク感

ストーリーを語る上で外せないのが、本作独自のシステムである「信念の天秤」システムです。

物語の重要な選択をする際に仲間達の投票(多数決)で選択肢を選ぶというものであり、選びたい選択とは意を反する仲間を説得し意見を変えさせることもできるため、プレイヤーが介入する余地もあります。

このシステム、人によっては面倒くさいと思うのかもしれませんが、信念の天秤での選択を介することで自分たちがこの選択を選んだんだという気持ちになり、悲惨な選択肢を選ぶ際には、

本当にこの選択肢で良かったんだろうか…

ああやっぱり嫌な出来事が起きてしまった。違う選択肢にしておけば良かったのか!?

というようなドキドキ感を楽しめたりしました。当然ながら選択によって物語上進むルートが変化していくこともあるので、そういう意味でも選択に悩まされながらも楽しめるつくりとなっています。

ゲーム内の選択をより「自分ごと」として感じさせシナリオへの没入感を上げてくれるシステムとなっているのは間違いなく、開発陣の良いチャレンジだったのではないかなと思います。

それぞれの「信念」を持ち輝くメインキャラクター達

メインとなるキャラクター達は敵も味方も個性のあるキャラが多く、各々が突き通したい信念を持っていることでストーリーを際立たせる良いスパイスとなっていました。

物語の項でも述べましたが、キャラクターの声優さんが非常に白熱した良い演技をしており、キャラクターの個性や信念を更に際立たせることに成功しています。

このゲーム「信念」がひとつのキーワードとなっていますが、「自分の信念を貫くんだ!!」という決意に震える場面に何度も出会うことができ、ゲームのコンセプトにも合致していてとても良かったです。

私の個人的なお気に入りキャラクターはベネディクト。鬼畜眼鏡はいいぞ。あとアンナも非常に好きです。この2人の関係性もとても良かったですね。アンナは戦闘面でも一番使ってたかもしれません。

戦闘を彩る音楽

戦闘BGMをはじめとした音楽も良かった。もう少し派手さやキャッチャーさがあっても良いかなと思ったりもしましたが、全体を通じてクオリティが高くトライアングルストラテジーという作品に非常によくマッチしていたと思います。

下記記事は作曲家:千住さんと主題歌を歌ったSARINAさん/REINAさん/MARUさんのインタビュー。

トライアングルストラテジーの気になった点

テンポの悪さとUIの悪さ

気になった点の筆頭は、テンポの悪さとUIの使いづらさです。細かいものを挙げていくと

  • ロード時間がそれなりにある(Nintendo Switch、DL版)。サブシナリオに入る時および戻る時にもロードが入るため多くのサブストーリーが出現したときは少しゲンナリした
  • キー入力受付までの時間がやや長く煩わしい
  • 敵の思考時間も少し長め(そのかわりAI自体はそれなりに良い)
  • RPGパート(街マップ)での操作性が悪く段差にも引っかかりやすい
  • 会話中に無駄に「…」が出現し、しかもエフェクト付きで飛ばすことも出来ずストレス

などが挙げられます。また戦闘速度はボタンを押しっぱなしにすることで高速化できますが、もっと高速なモードと常時高速化モード(ボタン押しっぱなしの必要なし)があればより快適だったかなと思います。

*2023/6/13のアップデートにより、会話中に発生する「…」エフェクトがボタン送りできるようになりました!!今までは会話中に「…」エフェクトが現れると数秒待たなければならず非常に不快でしたが、これで快適になりました。

サブストーリーのテンポの悪さと深掘りの浅さ

上で書いた通りサブシナリオに入る度にロードがありストレスでした。本作は特に物語性も重視しているため、ストーリーを読むことに対して極力ストレスを感じさせない設計にして欲しかったという思いがあります。

また、メインとなるキャラクターに関してはある程度のキャラの深掘りはされていた一方、その周辺のキャラクターに関しては浅いままで終わってしまったのが残念でした。

汎用ユニットがいない分、多くのキャラクターを仲間にできてそれぞれが特徴を持っているのですから、もう少し仲間同士の関わりであったり、深掘りがあれば更に愛着を感じるキャラクターもいたのではないかなと感じ、惜しいなと思わせる部分でした。

キャラの個性を活かす戦闘で犠牲となった育成自由度の低さ

バトルでは各キャラクターの役割が明確化している反面、育成自由度が非常に低かったのも気になる点として挙げられます。

本作における育成要素は簡素なアビリティ取得システムがあるだけ。私はSRPGの育成要素が非常に好きなので残念に思ってしまった部分でした。

ユニットのカスタマイズ性も同様に低く、装備変更できるのは2枠用意されているアクセサリーのみ。流石にもう少しあるかと期待していたため物足りなさを感じたのは事実です。

本作は

  • 戦闘とストーリーを重視
  • 各ユニット性能がユニークになるように設計
  • 他の余分な要素は削ぎ落としている

というようなデザインであり、そもそも自由な育成をさせる設計にはなっていないため育成自由度を求めるのはお門違いではありますが、是非とも次回作以降はこの点も重要視してくれると嬉しいです。

非常に綺麗なHD-2Dグラフィックと視認性の悪い戦闘マップ

良い点と悪い点両方ありますが、オクトパストラベラーなどで採用されているHD-2Dグラフィックは非常に綺麗で良かったです。単純なドット絵だけのSRPGも好きですがこのグラフィックスも非常に良いなと思わされました。

一方で、若干ながら処理が重いことに加え地面に落ちているアイテムやキャラの視認性が悪い場合がありました。SRPGにおいて適切なカメラワークと視認性の良さは必須項目であると思っているので、気になった点であると言えます。

HD-2Dと戦闘画面との(綺麗さという意味での)相性の良さを感じただけに次回作以降でもう少し改善してほしいなと思います。

美麗な戦闘シーン自体は非常に好みである

その他の要素

マルチエンディング

マルチエンディングであることが本作のウリですしTrueエンドへ至る道を追い求めるという意味で非常に良い体験ができたと思います。思い通りにいかない様々な出来事を乗り越えた先の感動はやはり良いものでした。

ただ完全にルートが分岐するのが終盤近くであったことが惜しかったなと感じるところです。

個人的には各ルートがもっと多様に突き進んでいって全然違う展開になるようなマルチストーリーも好きなので、信念パラメータ(利益/道徳/自由)を活かした尖ったストーリーも面白そうだなと思いました。某作品のロウルート、カオスルート、ニュートラルルートのような。こちらも今後に期待したいです。

トライアングルストラテジーの評価・レビューまとめ

トライアングルストラテジーのレビュー・評価をまとめると、

  • 重厚で丁寧に描かれたストーリーが良い
  • 戦闘もやりごたえがあり、強キャラを作って無双すれば良いだけでは無いのも高評価ポイント
  • 声優の演技や音楽もゲームの良さを引き立てている
  • サブストーリー周りのテンポの悪さは残念
  • この制作陣がつくる育成自由度の高いSRPGも見たい

となります。

ストーリーも重視した重厚なSRPGで、狙いであった「戦闘」と「物語」に関して高レベルで楽しめるものでした。特に戦闘は1手1手を考え、試行錯誤しながらクリアしていく楽しみを味わえて満足しています。

テンポの悪さやUI周りの操作しづらさ、育成要素の物足りなさなどが気になり惜しいなあと思う部分も正直ありましたが、それでも1週クリアする分には本当に楽しめた作品でした。発売日にフルプライスで買ったけれども値段相応に楽しませてもらいました!

個人的には「良作」という評価です。

「SRPGは育成要素のやり込みが命!」、「戦闘要素以外はいらない!シナリオはほとんど無くていい」みたいな人以外にはおすすめできると思います。

タクティクス・オウガやFFT、ファイアーエムブレムといった作品に代表されるような”SRPG”は、一時期ブームが来ていたものの今では発売されるゲーム数も少なくなっており不毛な分野になりつつあります。発売されたかと思っても過去作の焼き直し(リマスターやリボーン等…)。現在でも人気かつクオリティの高い新作を発売し続けているのはファイアーエムブレムシリーズくらいではないでしょうか。

そういう状況の中で、本作のような丁寧に作られた面白いSRPG作品が世に生み出されたことは本当に嬉しいです。今後もこの開発陣による次回作や、タクティクス系の新作ゲームが発売されることを心より願っています。

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